むし歯について

むし歯

 むし歯は、正式にはう蝕といい、細菌が食べ物の糖から産生した酸で歯が溶ける病気で、歯周病とともに歯科の2大疾患といわれています。その進行程度で、齲蝕症第1度(C1)、2度(C2)、3度(C3)、4度(C4)に分けられ、治療も詰める処置、歯髄(俗にいう神経)を取る処置、かぶせる処置、抜歯と、重症になるほど大変になります。他に健診などで「Co」というのを見たことがあると思いますが、「シーゼロ」ではなく「シーオー」と呼びます。これはいわゆるむし歯のなりかけで、経過観察が必要(要観察歯)とのことで、観察observationの頭文字であるOを付けてCoとしています。

むし歯の進行

C0(要観察歯)
C0(要観察歯)

 初期のむし歯です。このまま放置すると進行する場合があります。
C1
C1

 歯の表面のエナメル質が溶けてきます。痛みは有りませんが、黒っぽく変色してきます。
C2
C2

 歯の内側の象牙質まで進行し、穴が開いている状態です。冷たいものなどで歯がしみることがあります。
C3
C3

 むし歯の穴が拡大し、歯髄(神経)まで進行した状態です。場合によっては激しく痛みます。
C4
C4

 歯が溶け根元部分だけ残った状態です。このまま放置すると「根尖性歯周炎」や「顎骨の炎症」と根の先に化膿が起こりひどくなる危険性もあります。

むし歯の発生 ―keyes(カイス)の3つの輪―

Keyseの3つの輪をもとに作成
 歯の表面のエナメル質は、そのほとんどがハイドロキシアパタイトといわれる結晶から出来ています。その結晶はカルシウムやリンといったミネラルで構成されており、非常に安定した硬い結晶です。しかし飲食により細菌が増えプラーク(歯垢)が形成されると、お口の中にいる細菌が糖から酸を産生するためにお口の中の環境は酸性に傾き、歯に含まれるミネラルは少しずつ溶け出していきます。これが「脱灰」といわれる現象で、その状態が進行し肉眼でもわかる穴が出来てしまった状態が「むし歯」です。

 むし歯の発生については、宿主(歯・だ液)、細菌、食餌(糖)の3つの因子が関与することを説明した「keyes(カイス)の3つの輪」が昔から有名です(なお、時間を加えて4つの輪で説明しているものも見かけますが、3つの輪が本来のものです)。むし歯は、これらの力のバランスにより発症するかしないかが決まるというもので、糖がなければむし歯は発生せず、細菌がいなければむし歯は発生しない、あるいは歯の質を高めて強化すればむし歯にかかりにくい、ということになります。(歯がなければもちろんむし歯にはなりません。)

 また、細菌は酸を産生するだけではなく、不溶性グルカン(多糖類の一種)というネバネバした物質を産生し歯への付着力を高めたり、細菌の塊であるバイオフィルムを形成したりしてさらに悪さをします。このバイオフィルムは薬剤が内部へ浸透するのを阻止するために、むし歯だけではなく歯周病などの感染症においても治療に対して抵抗する因子になります。

唾液の働き ―脱灰と再石灰化―

 生体においては、いったん脱灰が起こったからといって必ずむし歯になるわけではなく、速やかにプラークを除去すれば、唾液の力により酸を中和しミネラルが歯に再び取り込まれて元に戻る、すなわち「再石灰化」が起こります。お口の中ではこの脱灰と再石灰化が繰り返されていますが、歯の表面にプラークが停滞したままだと再石灰化が間に合わず、その結果脱灰が進みます。また間食が多いとお口の中が酸性に傾く時間が長くなり、元の状態に戻りにくくなりむし歯が出来やすくなります。ですから、むし歯を予防するにはプラークを除去することと間食に気を配ることが大事になるわけです。また、再石灰化を促進するためにキシリトールガムを噛んで唾液の分泌を促すことや、ガムに含まれる種々の成分の働きを期待することも有用です。

むし歯予防と再石灰化について

  1. むし歯予防にはフッ化物が有効です。これは、歯のハイドロキシアパタイトがフッ素を取り込み、フロールアパタイトという構造に変化するため、結晶性が向上し歯質が強化されるからです。

    フッ化物としては、歯磨剤、ジェル、洗口液などがあります。

  2. むし歯のなりかけ(Co:シーオー)は、カルシウムやリンなどのミネラルが溶け出す脱灰が起きた状態なので、穴が開いてしまう前にミネラルを補給し、再石灰化を促進することが重要です。

    再石灰化を促進するものには、MIペースト、ポスカF(キシリトールガム)があります。

  3. しかし、フッ化物入りの製品とMIペースト両方を毎日使用することは、実際には大変です。

  4. 「クリンプロ歯磨きペースト」は、フッ化物とミネラルを同時配合した、これまでにはなかった画期的かつ理想的な歯磨剤です。むし歯予防と再石灰化の促進にとても有用だと考えられます。
*ご不明な点は、スタッフにお問い合わせください。

保険で白い歯が!

 今までは保険で奥歯に被せ物をするには銀歯にしか選択肢がありませんでしたが、今では保険で白い歯を入れることが可能になりました。
ただし被せる歯の位置により適応外になる場合もあります。
詳しくは医院にてお尋ねください。

セラミックの詰め物と被せもの

セラミッククラウン(被せもの)
セラミッククラウン(被せもの)

 セラミッククラウンは、むし歯や衝撃で歯が欠けてしまった場合などに、歯に被せて治療する方法です。セラミックでできているので、色調や透明感に優れ、きわめて自然の歯に近いものを再現することができます。一般的にセラミックといわれるものの中には、フレーム(土台)に金属を使用するものや、セラミックと樹脂を混ぜ合せ、硬度を調節したものなどもあります。
セラミックインレー(詰めもの)

 セラミックインレーとは、セラミック(陶材)製の詰め物のことです。むし歯治療後などの金属の詰め物が気になる方やむし歯治療をした部分を埋める場合に用います。セラミックインレーは、ご自身の歯と同じ色で作製されるため、歯の自然な美しさに仕上がります。治療費は、やや高くなりますが、他の詰めものの金属やコンポジットレジンに比べ、接着力や耐久性に優れていますので、2次カリエス(むし歯を治療した箇所が再びむし歯になってしまうこと。)の可能性が少ない、審美性と機能性を兼ね備えた治療法です。