メインテナンス

メインテナンスとは

 メインテナンスとは、歯周基本治療、歯周外科治療、口腔機能回復(修復・補綴)治療により治癒した歯周組織を、長期間維持するための健康管理です。メインテナンスは、患者さんが行うセルフケアと、歯科医師・歯科衛生士によるプロフェッショナルケアからなります。これに対して、治療により病状安定となった歯周組織を維持するための処置は、歯周病安定期治療(supportive periodontal therapy:SPT)といい、安定はしているが一部に治癒していない部位がある場合に行います。また、病状が進行してしまった場合は再治療の対象となります。

メインテナンスはなぜ必要なのでしょう?

 天然歯やインプラントを長期的に良好な状態で維持するには、患者さんによるセルフケアが主体となります。しかしながら、毎日ケアを行っていても完全に汚れを落とすことは困難ですし、歯と歯肉のすきま、いわゆるポケット(健康な状態では歯肉溝といいます)内の清掃は実際には不可能です。そこで、日常のセルフケアの他にプロフェッショナルケアが必要になります。つまり、患者さんと私達の役割分担、共同作業によるメインテナンスによって健康な状態が維持できるわけです。

 メインテナンスの目的を整理すると
  • 歯周病再発の予防
  • 新たな歯周病発症部位の早期発見
  • 良好な歯周組織環境の長期にわたる維持
 となります。

具体的に何をするのでしょう?

 定期的なリコール(一定期間経ってから、再びの診察)により

 口腔衛生指導(プラークコントロール)

 専門的機械的歯面清掃(PMTC)

 スケーリング、ルートプレーニング(SRP)などを行います。

PMTC ―いい状態を維持するためのプロケアー

 PMTCとはProfessional Mechanical Tooth Cleaningの略で、「専門的機械的歯面清掃」と訳されます。詳しく述べると、「専門家により歯間隣接面も含め、すべての歯面の歯肉縁上および歯肉縁下1~3㎜のプラーク(歯垢)を機械的に選択除去する方法」と定義されます。歯にダメージを与えないように注意深く表面の汚れを取り除き、フッ化物含有のペーストと器械を用いて歯の表面をつるつるにします。これにより見た目がきれいになるだけではなく、セルフケアでは取りきれない部分の汚れを取り、バイオフィルムといわれる細菌の塊を破壊、除去し、さらにプラークやステイン(着色)が付きにくい滑沢な面に仕上がります。

スケーリング・ルートプレーニング

 スケーリングとは、歯に付着したプラーク、歯石、その他の沈着物を機械的に除去することで、ルートプレーニングとは、ポケット内歯根面の細菌やその他の代謝産物を含む病的な歯質(主にセメント質)を除去し、生物学的に為害作用のない滑沢な歯根面を作り出すことです。簡単に言えば、スケーリングは比較的浅い所の歯石などを取ることで、ルートプレーニングはポケット内の深い所のお掃除をして歯根面をつるつるにすることです。

本当の健康を目指して

 むし歯や歯周病がない状態、これはすばらしいですよね。さらに、白く、ピカピカした美しい歯であればもっと素敵ですよね。やはり白く輝く歯の笑顔に勝るものはありません。欧米では、髪形やお肌の状態よりも美しい歯の笑顔を重要視する人が多いと言われています。お口の健康は自信につながり、積極的な性格になれます。

 一方、むし歯だらけ、歯周病で歯はグラグラ、着色だらけで口臭がひどい、こうはなりたくないと誰しも考えると思います。でも、お手入れ、定期健診やクリーニングを一切しない、つまり自分自身の努力がないのではとてもいい状態を達成できません。それにはまずは毎日のセルフケアを充実させ、どうしてもご自身だけでは対処出来ないところは、われわれプロにお任せ下さい。きっと皆様の健康作りのお役に立てると思います。

 ところで、健康とはどのような状態なのでしょうか。もちろん病気にかかっていない状態ですが、はたしてそれだけで健康と言えるでしょうか。WHO(世界保健機関)は、健康の定義を「単に病気がなく病弱ではないというのではなく、身体的、精神的な、社会的に良好な状態」としています(病気ではない≠健康な状態)。

 お口の機能は食べること、話すことにとどまらず、笑うこと、表情を作るといった感情表現や精神的な健康にも影響を及ぼすと言われています。むし歯や欠損がなく、きれいな白い歯であれば、きっと素敵な笑顔になれるでしょうし、何事にも自信を持って積極的に向かうことが出来ます。また、咀嚼機能が良好でよく噛めるということは、日常活動、全身的な健康、心の健康に寄与し、QOL(Quality of Life)の向上に役立っていると考えられています。QOLが高まってこそ、真の「健康」と言えるのではないでしょうか。

 皆さんの中には、たとえ歯石が沈着していなくても、着色が気になるという方も多いと思います。でも残念ながら、現状の保険医療では病気を治すことが目的で、予防するための行為は含まれません。しかし、本当に重要なのは病気を治すことではなく、病気にならないように予防することだと考えられます。オプティマルヘルス、すなわちあなたにとって「最高・最善の健康状態」を手に入れませんか。

自費のメインテナンス

 クリーニングを行う回数は、できれば多い方が良いとお考えの方が多いと思います。状態にもよりますが、日常のセルフケアの他にある程度頻回にメインテナンスを行う必要があります。しかしながら、保険診療ではいろいろな制約があるために、理想的な形でメインテナンスを行うことが必ずしも出来ません。そこで当院では、保険での定期的なクリーニングに加え、自費のメインテナンスをお奨めしております。これは単にクリーニングの回数の不足分を補うだけではなく、保険で行う処置と内容も異なっています。

自費と保険のメインテナンスの違い

  • 保険での治療は疾患状態から健康へ改善することが目的ですが、自費のメインテナンスは健康な良い状態を維持、もしくはもっと改善すること(オプティマルヘルス)が目的です。
  • 保険で行うスケーリングは歯石除去と歯面の研磨を行いますが、自費のメインテナンスは隣接面のPMTCを念入りに行い、着色をより落とし、歯面をより滑沢に磨き上げます。つまり、保険での処置と比べ歯面を丁寧に磨き上げる程度が異なります。
  • 患者さん一人ひとりの状態に合わせて、むし歯予防、歯周病予防、着色の付着予防のうちどれが主たる目的かを判断します。目的の違いで使用する器具やペーストの種類が若干異なり、ハイレベルなテクニックを必要とするため、当院では熟練した衛生士に担当させております。
  • 自費のメインテナンスは、PMTCの後にトリートメントペースト(ナノ粒子ハイドロキシアパタイト)を用いて、歯面の小さな傷を修復します。
  • その後MIペーストでミネラルパックを行い、再石灰化を促進しより強い歯面にします。
  • 歯肉縁上にはエアーフロー、歯肉縁下にはペリオメイトを用いたパウダーメインテナンスを実施します。これによって着色をさらにきれいに落とし、ポケット内は安全で組織に優しいメインテナンスとなり、より健康に寄与する確実な処置が可能になります。
  • グリシン(糖原性アミノ酸)を用いたパウダーメインテナンスは、バイオフィルムの破壊において歯面を極力傷つけず、効率よく処置を行うのに適しています。器具を直接歯面に当てることなく、広い範囲を対象とすることが出来ます。また、歯肉縁下に用いるパウダーは水溶性なので、ポケット内に残っても大丈夫です。
  • 年2回の歯石除去だけでも効果はありますが、さらに健康なより白い歯を維持するための処置として、自費でのメインテナンスをお考えください。処置の目安としては、年2回(6か月ごと)のスケーリング、3か月ずらして年2回の自費のメインテナンス(ミネラルパックを含む)を実施するのが望ましいと考えられます。
  • 普段のセルフケアを十分に行ったうえで定期的なメインテナンスを受けることが、より良い状態を作り上げるポイントです。
  • 歯石の沈着が著しい場合は追加の料金が発生したり、2回に分けて行ったりすることがあります(2回分の料金が発生します)ので、あらかじめご了承下さい。
  • その他、通常の治療を受ける時間がない、たとえば結婚式、成人式、急なお出かけなどの際に、たった1回の来院、処置で白く美しい歯が自分のものになります。
  • 当院では、皆様に合ったセルフケア、プロケアをご提案いたします。